GブレイカーのSpecNote

日々の雑記とメモ。スペックがわかるほど量を書いてませんがね。

不思議系上司の攻略法 感想

 感想の前に経緯をお話します。
 上記の通り、「ビブリア古書堂の事件手帖」を買うため本屋に訪れた私ですが、本棚に表紙を見せて置かれていたのを発見し、なんとなく表紙のOLさんが気に入ったので、これまた何も考えず下調べもしないで一緒に買っていきました。人生勢いが大事です。
「ほう、メディアワークス電撃文庫以外に間口を広げたのか……いい加減、ラノベの文章とベタな展開を読むのも辛い歳になってきたし、気楽に読めそうだし調度良いな。主人公の年齢から察するにラノベを読むのは辛い二十代半ばをターゲットにしてそうだ。ビブリア古書堂と同じレーベルだしこれまたちょうどいい……。新しいレーベルなら手も出しやすい」
 とかナントカかんとか、したり顔をしながら本屋の文庫コーナーで薄ら笑いを浮かべている変人を見かけたりしたら、多分それは私です。


 ラノベじゃないか。


 しかもレーベルのターゲット層は調べたら予想通り「ラノベがキツイお年頃」だし。最近は可愛い女の子のイラストが表紙にある本なんて腐るほどあるから、そこで判断する能力が完全に麻痺していた。しかもビブリア古書堂のイラストがどっちかっていうと一般寄りの癖のないイラストだったので、そういうレーベルなのかと思い込んでいた。油断しすぎだ。よくよく考えればラノベだ。
 結局、「女の子と運命的な出会いをして、秘密を共有し、男が四苦八苦しつつ信頼を深めていく」という典型的なラノベ文法に当てはまる内容でした。ご紹介します。


 主人公・梶原健二は、昨今職場の意識レベルの低さと、締切の厳しさと、上司の無茶な命令で重労働に苦しみ、しかも会社は赤字になりやすいことで有名な死の職種・SEである(彼の職場はまだマシなように見えますが)。ある日、こちらが強く出れねー顧客に連れられメイド喫茶を訪れると、綺麗で可愛いメイドさんを発見。後日、そのメイドさんがクールなキャリアウーマン石峰真夜として親企業から職場に派遣され、彼の年下上司になりました。彼女の目的は経営を回復するための改革です。ひょんなことから主人公は、彼女の改革が失敗したら大々的なリストラの嵐が起こるという情報を入手してしまいます。改革に良い顔をしていない人たちに、もし彼女が休日は実はメイドをしているとバレたら一大事だぜ、こいつぁ何とか俺がフォローするっきゃねぇ!
 かつてない修羅場の予感が、オフィス内を駆け抜ける――
 

 とまぁこんな感じ。やめておきなさい、わざわざ面倒事に首を突っ込んで何をしているんですかキミは、大人しく転職しなさい、と主人公に同情を禁じ得ないのは必至!(笑) ……理系の人って苦しくても仕事を手放したがらない、いらないタフさがあるんですよね……。(遠い目)
 全体の構成は結構よくできてます。次から次へと問題や事故が起こり、駆け引きや、最後の「決戦」の緊張感は良い具合。まぁ最後はちょっと力技っぽい部分もありますが、許容範囲内かと。専門用語も出てきますが、まぁ私はあまり苦になりませんでした。SEの友人から話を聞いていたり、次世代通信規格(XGP)を含めたネットワーク関連のこととか趣味で調べてたせいもあるけど、深くは突っ込まないので流して平気なレベル。(SF作品とかロボットアニメで、背景に専門用語が飛び交わすことで説得力を出してるのと同じ感じといえば分かりやすいか)
 同時並行で不器用にも少しずつ上司と信頼関係を築いていきますので、その辺りも見れます(トム・ハンクスの映画とかに似てるかも。いや、そうでもないか?)。
 ラノベにありがちな過激なセクシャル描写はありませんので、落ち着いて読めます。純粋に物語に浸れます。文体も流石ラノベなだけあってやはり読みやすく、わかりやすい。
 ただ個人的に少し気になるのが、「え、恋愛パートはこれでいいの?」って不安になるところです。いや、これが良いんですけど。それくらいのが見たかったんですけど(恋愛描写がほとんど無いラノベってねーのかよ、と一時期不満に思ったことがあったので)。登場人物は社会人だし、あれくらいがベストかと思いますけど。
 ……まぁ若年向けはマンガだろうが小説だろうが記号的でクドくなるから、それに慣れていると少し不安になります。もともと落ち着いた話が読みたいと思っていたのに、実際やられるとそれが落ち着かないのだから、私も大概な少年漫画脳ですね(笑)。




 昨今、日常的な描写(リアリティとでも言うのか)が多くなりつつある若者向けコンテンツですが、その流れの最たるものというか、先端的というか、時代に合っている印象です。正直に言うと、別にメイドさんじゃなくてもいいんじゃない?と思ったりもしますが、まぁそこは新レーベルらしく手探りでやっていたのかなーとか思ったり。多分、「ラノベを読むのが難しいお年頃」にヒットしやすくて(?)勢力を伸ばしている講談社BOOKSに対抗したいんじゃないかなぁとか考えたりもした。実際そのへんを探していたから、私には渡りに船だったわけです。というわけで、明日三巻も買ってこよう。

不思議系上司の攻略法 (メディアワークス文庫)

不思議系上司の攻略法 (メディアワークス文庫)

不思議系上司の攻略法〈2〉 (メディアワークス文庫)

不思議系上司の攻略法〈2〉 (メディアワークス文庫)