GブレイカーのSpecNote

日々の雑記とメモ。スペックがわかるほど量を書いてませんがね。

バディ・コンプレックス 1〜6話 前半戦の批評と感想

 先に言っておくと、私はこの『バディ・コンプレックス』が結構気に入っています。
 理由のひとつに「ロボットもので時間旅行を扱う」というものがありますが――それは今回は、ちょっと横に置いておいて、今回は人物描写の部分に焦点を当ててお話していきましょう。
 この作品の魅力はズバリ「わかりやすさ」にあります。まず簡単に導入に触れます。

 主人公・渡瀬青葉くんは突如ロボットに襲われるも、未来から助けに来たという女の子・弓原雛ちゃんに命を救われ、結果70年後の未来へとタイムスリップ。気がつくと戦場のど真ん中で、一緒にいたはずの雛ちゃんは行方が知れず、わけのわからんまま青葉くんはロボットに乗って戦うことに――というのが、簡単なあらすじですね。


 うん、導入は結構魅力的ですね。そりゃ『ターミネーター』とか実写作品と比べるとありがちですが、主人公が事件に巻き込まれる切っ掛けが可愛い女の子、というのがどこかラノベチックで取っ付きやすい。この辺は深夜アニメらしいです。作品のメインターゲットは中高生あたりでしょうかね?

 ヒロインであるヒナちゃんは「未来から来た」「ロボットのパイロット」「主人公のことが好き(らしい?)」という点で、1話の時点で十分なキャラ立ちができていましたね。彼女の目的はハッキリしていて「主人公・青葉くんを守ること」でした。わかりやすいですね。ぶっちゃけ、1話の主人公は彼女だったと思います。
 一方、巻き込まれた主人公の青葉くんは「明るく元気な少年」「非常に仲間思い」「人懐こい」「ちょっと鈍感でのんき」など、大変わかりやすいキャラクターで癖がありません。とっつきやすいですね。

 一話における青葉くんは平凡な学生なので、何も知らないままヒナちゃんに守られる立場なわけで、その点も視聴者とシンクロしやすく、私の中では結構ポイントが高かったです。まぁ青葉くんの飲み込みの早さ……というよりかは、呑気さにはちょっと呆れかけてしまいますが(^^;)
 もっとも、ヒナちゃんが目の前で、無償で、命がけで自分を助けてくれて、ちゃんと真剣に話をしてくれたわけですから、青葉くん的には頼りがいがあったんだと思います。彼の天性の人懐こさもあるのでしょう。

 ようするに、ヒナがちゃんとヒロインをやってくれて、青葉くんもそんな彼女を立てつつ、視聴者である私も彼女が好きになれるという図式なわけですよ。こういうの、私の中ではけっこう重要なんです。
 最近はほら、ヒロインが空気だったり、軽く扱われたり、雑だったりすることがよくあるでしょ? テンプレートみたいな行動しか取らなかったりとか、土壇場の思考がぶっ飛んでたりとか、展開優先でキャラが活きてない感じの。
 ましてやロボットものなんて、主人公とロボットにスポットが当たりやすいから、余計にヒロインを立たせるのが難しいわけです。マクロスが恋愛をテーマの一つにしたのも頷けるというものです。

 今後、青葉くんは「ヒナヒナ」と連呼するわけですが、彼にとって見知らぬ土地、見知らぬ人たちの中、という状況で、唯一自分の立ち居地を理解してくれているのは彼女だけなわけですから、頼って当たり前なんですね。その彼女の行方が知れないんじゃ、そりゃ騒ぎますよ。

 そういう非常事態に主人公が陥った時は、青葉の中でヒナの存在がどれだけ大きいものになってるかが重要になるので、1話の時点で見てる私もヒナちゃんのことを好きになれてないと、青葉くん自身に感情移入しにくいんです。
 おまけに次にヒナが出てくるときは青葉のことを知らずに、敵として出てくるわけですからね。彼の混乱もピークに達するというもの。ヒナちゃんが行方知れずになるならばこそ、第1話における彼女のインパクトってのはとても重要だったわけです。
 そういう意味じゃ、掴みはOKで、面白かったと私は思っています。

 ――なんですが、話が半分進んだ現在でもほとんどヒナちゃんの出番が無いですね……。
 分割2クール、にしてもそんな噂は無いし……BDの収録話数配分から見て1クールもののはずだし……こんなゆっくりな展開でいいのか?と、少し不安になります。まぁ気にしても仕方ないので、話を続けましょう。

 そんなゆっくりな展開だからこそ、キャラクターの心理描写をちゃんと追える「わかりやすさ」がありますね。戦闘とは異なり、人の感情の変遷と言うのは、思いのほかゆっくりだったり、強烈な事件が無いと変わらなかったりします。切っ掛けが無いと思考って止まっちゃうんですよね。そういう意味じゃ、昨今溢れている1クール作品では、キャラクター同士のドラマを描くのは難しい時間配分なのかなと思います。
 『バディ・コンプレックス』はそのあたりを気にしているように見受けられるました。今回の6話にしても最初は乗り気じゃなかったディオが、青葉の言動を切っ掛けにだんだん柔らかくなって最後はPRを真面目にやったり、青葉も立ち位置が分かってきたのか浮かない程度に周囲に溶け込んできたりと、ゆっくりではありますが時間を目一杯使ってやっている印象です。(こういう作品は2クールやってほしい。アニメでは『シュタインズ・ゲート』はドラマ部分を本当に上手にやっていたのが近年では印象的)
 この辺はタイトル通り「バディ」をちゃんと描いていますね。徐々に友情を深めていくのはバディものの醍醐味というものです。こういうのは昔から好物。(男同士の友情を描くとホモホモ言われたりする、ネットの風潮が私はあまり好きではありません(^^; 本当のホモは“もっと臭い”ですからね)


 さて、ここからが問題提起。
 まぁディオとの話もいいんだけど、さっさとヒナちゃん出せやとか思ってしまうのは、やはり1話のインパクトがあったからでしょうか。ここが一番重要な点にして、最大のネックにもなっていると私は考えています。

 人物描写を丁寧にする――つまり、ヒナ側(ゾギリア側)の状況をちゃんと描こうとすると、青葉側と交わるまで、どうしても時間がかかっちゃうんですよね。“青葉(私たち)の知っている方のヒナ”が退場すると、こういう弊害が出てしまうわけです。悲劇的な再会を描くための、構造的な欠陥が出てきてしまうんですね。
 劇中の青葉くんから見れば、恐らくまだ数日〜一、二週間ってところなんでしょうけど、私からすると六話分、六週間=42日もの時間が流れているわけです(^^;)
 二人が離れている時間が長くなればなるほど、私と青葉くんの気持ちに差が出てきてしまいます。それこそ「ヒロインはあっちの子でいいよね」みたいに考えてしまっても仕方ない。(いや、青葉くんはそうは思っていませんけど)

 少なくとも話数を半分消化する6話にはヒナとの、もうちょっと深い会話が欲しかったところです。現状では、バディものにしたいのか、女の子との恋愛を描くのかどっちつかずな感じがしますね。(多分どっちもなんでしょうけど、それならそれで、そこを見せてくれないと)
 年を食ってる私がこうなんだから、若い人はもっと長く別離を感じているのではないかな、と思います。……いやいや、私はまだまだヒナちゃんに会いたくてたまらないですが!(笑) 黒髪だし、巨乳だし、絶対領域サイコーですよ!!

 ま、気持ち悪い冗談はさておき、再会をここまで引っ張るんだったら、いっそのこと1話の段階でヒナに「好きよ」って告白されてキスされるとか、それくらいのことやっといて良かったんじゃないかと思いますね。 ヒナという女の子がどういう子なのか、まだよくわからないし、今後の展開も想像できませんから、あまり大それたことは言えませんが……青葉が『ヒナにこだわる理由』というのが、もっとガッチリ欲しいというのが、私の素直な心情です。
 一応そこからスタートした物語なわけですから、見てるこっちの気持ちも引っ張って欲しいなと。
 あの年頃の男の子がクラスメートの美少女から告白されてキスでもされりゃ、命のやり取りしてる戦場でも必死にこだわれるだろうと思うわけです。(戦闘中に「俺のこと好きだって言ったじゃないか!」「なにこいつ気持ち悪い!」とか会話すれば、間違いなく笑えるしねw)
 早く会いたいんですよ、私は!!

 で、その必死さがあれば周囲に溶け込むのも、もっと自然に素早くできると思うんですよね。まゆかちゃんとか、リーさんや整備員のおやっさんとか全体的にみんな人がいいからフォローしてくれますけど、普通なら「未来からきた」とか言い張ってれば白い目で見られたり、不気味がられたりするもんです。
 そこに明確な、それこそ誰にでも分かる「青葉くん自身の戦う理由」があれば、周囲の人たちも彼に興味を持つし、真面目に話を聞こうという気にもなるでしょう。
 それこそディオの妹さんを助ける話は、青葉がまだ一般人であった頃にやった方が理由になったでしょう。

 まぁ各キャラクターに嫌味がないところが、この作品の良いところでもあるんですけどね。
 良くも悪くもみんなマイペースで、のんびりしてる。深夜にボケーっと見る分には良いのかもしれませんが……。

 青葉くんには、もうちょっと彼なりの必死さが欲しいなと思います。せめてヒナが属してるゾギリアがどんな国なのかとか、家族や友人がどうなったか軍のデータベースを使って調べてもらうようお願いするとか、この70年間なにがあったのかとか。
 いや、まぁ歴史の講義には実際に彼は興味を示さなかったからそこはいいにしても、せめて友達思いな部分を出してあげてほしかったなと。少なくとも町を散策する時間はあったわけで、行方が見つからなくても良いから“自分で調べる”という姿勢くらいはもっとしっかり見せてほしかったです。図書館を使って調べるとかさ。あの辺もまゆかちゃん頼りだったみたいだし。
 ロボットものの主人公にしては、ちと呑気すぎるかなーって。

 シリアスでも作風が暗くはならない方法もあると思いますよ。アニメじゃありませんけど、今やってる『仮面ライダー鎧武』はそのあたり、まだ上手にやってますよね。青葉くんは前向きなやつなわけだし、シンプルな理由でもちゃんと説得力は与えられると思います。
 少なくとも「俺を必要としてくれる」というのは、まだちょっと弱かったかなと思います。消去法的に感じるというか。



 まぁこんなふうに、人物描写を前面に出そうとしている、というのは窺えます。
 サンライズはここのところ、メインのロボットものでヒット作があまり出ていないし(ヒットしたのはタイバニ、AW、ホライゾンあたりかな?)、『革命機ヴァルヴレイヴ』は「機動戦士ガンダムSEEDみたいな作品」を目指していた、とインタビュー記事で見ましたから、この『バディ・コンプレックス』もそこを狙っている部分もあるのかなーとか思ったりします。
 「敵味方に分かれた二人」とか「突然戦場に放り込まれる」とか「戦艦とロボット」とか、今回触れた心理描写の強さとか、けっこう似てると思います。

 ロボットものってのは、ただロボットがカッコよく戦ってりゃそれでいいってもんじゃないんですよね。SEEDはそりゃカッコよかったですけど、それ以外のところもしっかりやってるから面白かったわけで。それはファーストガンダムも同じなんですよね。
(個人的にガンダム00のチームが作ってる作品が好きじゃないんですが、なぜかと言うとそういう「キャラやロボットがカッコよけりゃいいんだろ」みたいのが透けて見えるから。今やってるBFも安易にUCの方法論を真似てるように見える)

 
 さて、最後は苦言が出ましたが、今後も期待しているからこその感想だと言っておきます。
 私はロボットものが本当に好きで、今でもおもしろいものは絶対できると信じてます。だからこそ、新作アニメ、特にガンダムやシリーズものに頼らない新作ロボットアニメは一番の楽しみなんです。
 『バディ・コンプレックス』もちゃんと応援してますんで、頑張ってほしいですね!


 あ、今回の6話。メカの作画、特に止め絵で使われたカットがよかったです。誰作画だろうか。