東方求聞口授 感想
おもしろかった。
設定書きを眺めているのもまぁ面白いんだけど、やっぱりキャラクターの会話があると面白い。ZUN節の良いところは「偉そうなことを言っているけど、実際は間抜け」という二面性だ。最近はこの二面性で笑わせてもらうことが多い。山彦の「なんだとテメー!」「あのねー今はねー」に代表する妙に俗っぽいところとか、「妖怪リモコン隠し」とか「妖怪パンクライブ」とか。布都に至っては「仏像を怖がるあまり寺を焼く」とか、もうどうしようもない感じ。エキセントリックすぎる。
他にも、色々発想がぶっ飛んでいて、どうやったらこんな考えが生まれるんだと大変興味深いね。
――― (前略)心を捨てて「空」に迫るというのは面白いな。
神奈子 確かに、ペットにそんな名前を付けたのは、
もしかしたら姉(さとり)にも何か思うところがあったのかもね。
個人的に一番興味深かった一文。私は仏教好きというか「空」の概念が好きなので、なるほど、うまい設定だと唸った。頭が空っぽ、心が空っぽというのは嫌われるけれど、だからこそ至れる場所があるのでは、と想起させる。ポジティブというよりは「抵抗」のような考え方がツボ。古明池姉妹はどちらも自分のことがあまり好きじゃないんだろうなと思ったりもする。もし私が幻想郷にいたなら、どこの勢力に属するかと考えるとやはり命連寺を選ぶんだろうなと思う。是非ともお話を聞いてみたいものだね。
ところで、東方地霊殿は正規シリーズの、ここ四作の中で「宗教」という視点で見ると一番異色で、正直「風神録の外伝/続編」だと思っていたんだけど、この話から「星蓮船の序章/前日譚」だったのかなと考えが変わったりもした。いや、もともと星蓮船の伏線にもなっていた事件の話だったわけなんだけどさ。単体のストーリーとしてはただの事件だが、前後を繋ぐという役割をすごく担っている。茨歌仙も旧地獄が関係しているから、色々な作品を繋ぐ不思議な立ち位置にいるのかもしれない。今後はそういう視点で見ていくと何か分かってくるかもね。
全体的に今回取り上げられた三つの勢力はどれも胡散臭い。主義主張はあるけど煙に巻いてる感じで、具体的な言葉は避けてる印象。特に性質上強く出られなくてイジられる立場にいた仏門の白蓮はかなり言葉を選んでるようにも見える。本人のポケポケ具合もあって色々おかしい。やはり優しい人は腹黒く思われるのだろうか。阿求の評価だと魔的であると結構物騒な認識みたいだが。その代わり仏教トークになると生き生きするあたり、この人もやっぱり大概だと思う。
ちょっと分かり辛い表現があって「?」となるところもあったけど、キャラクターの関係性や性格などを分析するうえで中身の濃い本だったと思う。今まであった設定系の本の中ではキャラクター寄りで一番読み応えがあったかな。そして、やっぱり霊夢が出てくると東方って感じがして楽しいね。どんな相手にもツッコミを入れられるのは彼女しかいない(笑)。
一部あまり触れられないキャラが出てきてしまったけど、そこはギリギリ補完していたからまぁ良いと思う。私個人としては綿月姉妹……というか、依姫がゲームに登場する可能性が下がってしまったのが残念だけど、逆に何かお話が作られる可能性は上がったので今後に期待したいね。っていうか、さっき霊夢が出ると〜とは言ったけど、幻想郷メンバー抜きで月の中――というか天界の話とかやっちゃっても良いんでないですかい?(チラッ
あ、特典は今回もアニメイトさんのカラー栞シート。貴重なメンツが出ているのと、TOKIAMEさんの絵が好きなので。未だに霊夢のアイテムを持ってないので次に何か出たら霊夢を狙おうかな。
東方求聞口授 ~ Symposium of Post-mysticism.
- 作者: ZUN
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2012/04/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 13人 クリック: 1,104回
- この商品を含むブログ (33件) を見る